ECERSが示す！子どもの成長を促す「空間と家具」の秘密｜保育園と家庭の環境づくり

「なんだかこのお部屋、落ち着くな」

「ここでは思いっきり遊べそう！」

保育園や幼稚園の見学に行った時、そんな風に感じたことはありませんか？

実は、子どもたちが過ごす「空間」や「家具」の配置や質は、目には見えないけれど、子どもたちの成長に大きな影響を与えています。

世界中で保育の質を測る国際的なものさしであるECERS（幼児保育環境評価スケール）でも、「空間と家具」は重要な評価項目の一つです。

子どもが毎日を過ごす場所が、その子の学びや発達をどれだけサポートできているか、ECERSはこの視点を非常に重視しています。

この記事では、ECERSが示す「質の高い空間と家具」の基準とは何かを掘り下げ、それが子どもの成長にどんな良い影響をもたらすのかを解説します。

さらに、保育園選びのチェックポイントや、ご家庭でも実践できる環境づくりのヒントまで、具体的なアイデアをご紹介します。

わが子が安心してのびのびと、そして主体的に活動できる場所を、一緒に考えていきましょう。

ECERSが重視する「空間と家具」の質とは？

ECERSの「空間と家具」のサブスケールは、単に「広い部屋が良い」といった単純なものではありません。

子どもたちが安全に、快適に、そして意欲的に活動できるように、空間がどれだけ工夫されているかを細かく評価します。

具体的には、以下の点が重視されます。

広さと配置の適切さ:

子どもたちがスムーズに移動でき、窮屈さを感じずに遊んだり学んだりできる十分なスペースがあるか？

特定の活動（例：静かな遊び、活発な遊び）に適したエリア分けがされているか？

家具の安全性と発達への適合性:

子どもの体格や年齢に合ったサイズの椅子や机、棚などが用意されているか？

角が丸い、ぐらつかないなど、安全に配慮された家具が使われているか？

素材や遊び道具の多様性とアクセス:

子どもが自由に選び、自分で出し入れできるような遊び道具（ブロック、絵本、制作材料など）が豊富に用意されているか？

木や布など、多様な素材に触れられるか？

プライベート空間の有無:

一人で落ち着いて過ごしたり、友達と少人数でじっくり遊んだりできるような、静かで落ち着いた場所があるか？

例えば、絵本コーナーやロフト、布で覆われた空間などです。

清潔さと整理整頓:

空間全体が清潔に保たれ、おもちゃや教材が子どもが自分で片付けやすいように整理されているか？

これらの要素が整っている空間は、子どもたちにとってのびのびと自分を表現し、様々な活動に挑戦できる「第二の保育者」とも言えるでしょう。

ECERS視点の「質の高い空間と家具」が子どもの成長に与える良い影響

ECERSで評価される「空間と家具」の質が高い環境は、子どもたちの心身の成長に、以下のようなポジティブな影響をもたらします。

主体性と自己肯定感の向上

「自分で選ぶ」喜びを育む:

子どもが自由に遊びを選べるよう、おもちゃや道具が整理され、手の届く場所に置かれている空間では、子どもは「何をしようかな？」と自分で考えて選択する機会が増えます。

この「自分で決める」経験が、主体性を育む土台となります。

「できる！」という自信を育む:

子どもの発達に合った高さの棚や机、椅子があることで、自分でスムーズに作業を進められます。

手が届かずイライラしたり、無理な体勢で諦めたりすることが減り、「自分でできた！」という達成感や自己肯定感が高まります。

集中力と探求心の深化

遊びへの集中力を高める:

静かなコーナーや、特定の活動に集中できるスペースが確保されていると、子どもは外部の刺激に邪魔されずに遊びに没頭できます。

これは、集中力や持続力を育む上で非常に重要です。

好奇心と探求心を刺激する:

多様な素材や道具、興味を引く絵本などが魅力的に配置されていると、子どもは「これは何だろう？」「どうやって使うんだろう？」という好奇心を掻き立てられます。

様々な道具に触れて試行錯誤する中で、探求心や問題解決能力が自然と養われます。

社会性と情緒の安定

社会性を育む多様な場:

一人で集中できる場所、少人数で協力して遊べる場所、大勢で活発に体を動かせる場所など、様々な空間があることで、子どもは場面に応じた人との関わり方を自然に学びます。

協力遊びや役割遊びを通じて、協調性やコミュニケーション能力が育まれます。

情緒の安定を促す:

時には一人になりたい、静かに過ごしたいという子どものニーズに応えられるプライベートな空間があることは、情緒の安定に繋がります。

自分の感情を落ち着かせたり、リラックスしたりする場所があることで、子どもは安心して過ごせます。

身体能力と安全への意識

安全な環境で体を動かす:

安全に配慮された家具や、広々とした空間は、子どもが転倒などの心配をせずに自由に体を動かすことを促します。

登ったり、降りたり、運んだりする中で、基本的な運動能力や身体感覚が育まれます。

物の扱い方を学ぶ:

整理整頓された環境で、子どもが自分で道具を出し入れし、元の場所に戻すことを通して、物を大切にする心や、空間を意識する力が育まれます。

これは、将来的に整理整頓能力や計画性にも繋がる大切な習慣です。

保育園選びのチェックポイント：ECERSの視点で「空間と家具」を見る

見学の際、ECERSの「空間と家具」の視点から、ぜひ以下のポイントをチェックしてみてください。

子どもの目線で見てみよう:

おもちゃ棚や絵本棚は、子どもの身長に合った高さですか？ 子どもが自分で楽に出し入れできそうですか？

椅子や机は、子どもの体格に合っていますか？

部屋の隅々まで、子どもが安全に移動できそうですか？ 危険な角や、子どもが入れないようにするべき場所が適切に処理されていますか？

「遊びのコーナー」は充実しているか？

ブロック、おままごと、絵本、制作など、明確に区分けされた遊びのスペースがありますか？

それぞれのコーナーに、十分な量の遊び道具が用意されていますか？

子どもたちが、静かに集中したり、活発に体を動かしたり、目的に合わせて場所を選べるような工夫が見られますか？

プライベートな空間はあるか？

一人で落ち着ける絵本コーナーや、秘密基地のようなスペースがありますか？

疲れた時に横になれる場所や、落ち着いて過ごせる空間が用意されていますか？

清潔さと整理整頓は行き届いているか？

園全体が清潔に保たれていますか？

おもちゃや教材は、子どもが遊び終わった後に自分で片付けやすいように、種類ごとに分類されて整理されていますか？

自然素材や手作りの温かみがあるか？

木製の家具や自然素材のおもちゃなど、温かみのある素材が使われていますか？

子どもたちが作った作品が飾られているなど、空間に子どもの息遣いが感じられますか？

家庭でもできる！子どもの成長を促す「空間と家具」のヒント

保育園だけでなく、家庭の環境も、子どもたちの成長に大きな影響を与えます。

ECERSの視点を参考に、ご家庭でもできる簡単な工夫をいくつかご紹介します。

おもちゃは「見せる収納」で「選びやすく」:

すべてのおもちゃを箱に詰め込むのではなく、子どもが「何をしたいか」を選べるように、見渡せる収納にしましょう。

カゴに種類ごとに分けたり、棚に並べたりするだけで、子どもは自分で遊びを考えやすくなります。

子どもの手の届く高さに置くのが基本です。

「マイコーナー」を作ってあげる:

リビングの一角や子ども部屋に、絵本を読むためだけの小さなスペースや、お絵かきや制作に集中できる机と椅子を置いてみましょう。

クッションを置いて、子どもが安心して過ごせる「秘密基地」のような空間を作るのもおすすめです。

一人で落ち着きたい時に、自分の場所がある安心感を与えられます。

安全第一、でも「自由に動ける」空間を:

危険なコンセントやコードはカバーし、重い家具は固定するなど、安全対策はしっかり行いましょう。

その上で、子どもが自由にハイハイしたり、走り回ったり、バランスを取ったりできる十分なスペースを確保してあげましょう。物を詰め込みすぎず、余白を作ることが大切です。

「本物」に触れさせる機会を:

プラスチック製のおもちゃだけでなく、木や布、石、水など、多様な自然素材に触れられる機会を作りましょう。

五感を刺激し、素材の特性を学ぶことができます。

日常の中で使う食器や調理器具なども、プラスチック製ばかりでなく、安全に配慮しつつ本物の素材（陶器、金属など）に触れる機会も与えてみましょう。

「一緒に片付ける」習慣を:

遊び終わったら、子どもと一緒に「おもちゃのお家に戻してあげようね」と声をかけ、片付ける習慣をつけましょう。

片付け場所を分かりやすくすることで、子どもは「自分でできた！」という達成感を感じ、整理整頓のスキルも自然と身につきます。

まとめ

ECERSが教えてくれる「空間と家具」の質の重要性は、保育園選びだけでなく、日々の家庭での環境づくりにも大いに役立ちます。

子どもが自分で選び、自由に表現し、安心して成長できる空間は、単なる物理的な場所ではありません。

それは、子どもの好奇心、主体性、そして将来の学習意欲を育むための温かい土台となります。

ぜひ、この記事でご紹介した視点を参考に、わが子にとって最高の「空間と家具」の環境を、保育園でもご家庭でも見つけ、育んでいきましょう。