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保育環境評価スケール(ECERS)とは?保育園選びのポイントと活用法

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保育園選びは、子どもの成長にとって大切な決断です。

保育環境評価スケール(ECERS)は、保育園の質を客観的に評価し、子どもの発達や学びに最適な環境を見つけるためのツールです。

この記事では、ECERSの基本的な概要や評価ポイント、そして保育園選びに役立つ具体的な活用法について詳しく解説します。

大切な子どもが安心して過ごせる保育園を見つけるための参考に、ぜひご覧ください。

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保育環境評価スケール(ECERS)とは?

保育環境評価スケール(ECERS:エカーズ)は、Harmsらによって米国で開発された、3歳以上の集団保育の質を測定する保育環境評価ツールです。

保育園の環境が子どもの発達や学びにどのように影響を与えるかを「質」の観点から客観的に評価するために使用されます。

1980年の初版発行以後、1998年と2015年に大きな改訂があり、ECERS-3は2015年版。

保育環境評価スケールとして、米国や英語圏の国々のみならず翻訳されて日本を含む多くの国で導入されており、保育の質を見える化するための指標として役立っています。

ECERS3の評価内容と評価方法

保育園の環境を以下のような観点で集団保育の質を評価します。

評価内容

ECERSには、「空間と家具」「養護」「言葉と文字」「活動」「相互関係」「保育の構造」の6つのサブスケールがあり、各サブスケールに分類された35の項目があります。

各項目に含まれる15程度の指標(合計461指標)について、達成、不達成を観察により評価します。

各指標の評価をもとに項目のスコアが算出され、サブスケールに含まれる項目のスコアに基づいてサブスケールのスコアが計算されます。

6サブスケールと35項目の意味
  1. 空間と家具: 子どもの遊びと幼児期にふさわしい学びを支える室内空間を魅力的に構成する
    • 室内空間:気持ちの良い生活ができる
    • 養護・遊び・学びのための空間:安心し、楽しく過ごせる
    • 遊びと学びのための室内構成:好きな遊びを選び、じっくり取り組む
    • ひとりまたはふたりのための空間:一人で落ち着く、またはともに考え深めつづける
    • 子どもに関係する展示:自ら気づいたり、振り返ったり、他の人と興味関心を分かち合う
    • 粗大運動遊びの空間:身体を十分動かして充実感や満足感を得る
    • 粗大運動遊びの設備・用具:適切な活動を選び、進んで運動する
  2. 養護: 子どもの安心・安全を確かなものにする
    • 食事/間食:食べることを楽しむ
    • 排泄:自分で用を足せる
    • 保健衛生:自分の身体を大切にする気持ちを持つ
    • 安全:安全に気を付けて行動する
  3. 言葉と文字: 子どもが喜んで話し、文字に出会い、知りたくなるように助ける
    • 語彙の拡大:未知の言葉と出会い獲得する楽しさを感じる
    • 言葉の使用の促進:よく聞いてもらって、話す楽しさを知る
    • 保育者による絵本の使用:絵本を読んでもらってともに楽しんだり、うれしい気持ちになる
    • 絵本に親しむ環境:絵本の楽しさ、探す・知る喜びを味わう
    • 印刷(書かれた)文字に親しむ環境:文字の意味や役割、必要性がわかる
  4. 活動: 子どもがものに触れ、関わり、操り、つくり出し、夢中になることを支え、学びに向かう力を育てる
    • 微細運動:手や指を使い集中して遊ぶ楽しむ
    • 造形:作ったり描いたりして様々な表現を楽しむ
    • 音楽リズム:感じたことや考えたことを音や動きで楽しむ
    • 積み木:構成を楽しみ思いを表現し友だちと共有する
    • ごっこ(見立て・つもり・ふり・役割)遊び:イメージを形にして楽しみ、友だちと共有する
    • 自然/科学:自然に触れ、好奇心や探求心を持つ
    • 算 数:遊びや生活の中で数・量・形に親しむ
    • 日常生活の中の算数:生活の必要に応じて数量などに親しむ
    • 数字の経験:数字の意味に気づく
    • 多様性の受容:人には違うところと同じところがあることに気づく
    • ICTの適切な使用:テクノロジーで遊びや生活の幅を広げる
  5. 相互関係: 気持ちが受容され、伝え合いをし、新しい考えを生み出すことを支える
    • 粗大運動の見守り:身体を動かす様々な活動に目標を持って立ち向かう
    • 個別的な関わり:一人一人の特性に応じた指導
    • 保育者と子どもの相互関係:子どもが尊重され、認められ、支えられる
    • 子どもどうしの関係:他の幼児の考えや感じ方に触れる
    • 望ましい態度・習慣の育成:自分でしなくてはならないことを自覚して行う
  6. 保育の構造: 子どものよりよい生活を支えるクラスルーム・マネージメント
    • 移行時間と待ち時間:子ども自身が生活の見通しを持てる
    • 自由遊び:活動を楽しむ中で、自分で考えたり助けを得たりして自分で行う
    • 遊びと学びのためのクラス集団活動:他の幼児や保育者と親しみあい、支え合う

評価方法

3時間程度、対象となるクラスの保育を観察し、35項目それぞれにつき、不適切なレベルからスタートして、指標となる質問をひとつひとつ「はい」または「いいえ」のいずれかに判定し、手続きに従って1点から7点までで評点を得ます。

総合的な平均点が5点に達すれば「質の高い」保育であるとみなします。

  • 点数の意味は
    • 1点=不適切: ほとんどまたは全く実施されていない状態。
    • 3点=最低限: 最低限の基準は満たしているが、改善の余地がある状態。
    • 5点=よい: 適切に実施されており、質が高い状態。
    • 7点=とてもよい: 非常に質の高い実践がみられる状態。
    • 中間に2点、3点、4点がある。

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ECERS-3の評価構造と学力の関連

ECERS-3は、幼児教育環境の質を多角的に評価するツールであり、特に以下の分野が学力に密接に関連しています。

1. リテラシー(読み書き能力)の発達

  • 関連するECERS-3評価項目
    • 言語推進活動: 絵本の読み聞かせ、言葉遊び、語彙増加を促す対話。
    • 書字活動: 子どもが文字や単語を書く経験を提供する環境。
  • 学力への影響
    • ECERS-3で高得点を得た保育環境では、言語能力(語彙力、読解力)が高い子どもが多いことが示されています。
    • 保育者が意図的に子どもの興味に合わせた本や教材を選ぶことで、言葉の発達が促進され、小学校以降の読解力や作文スキルに良い影響を及ぼします。

2. 数学的スキルの発達

  • 関連するECERS-3評価項目
    • 数的概念の導入: 数字を使ったゲーム、積み木でのパターン認識。
    • 空間認識活動: パズルや構造物作り。
  • 学力への影響
    • 数概念や空間認識をサポートする活動が豊富な環境では、数的思考力や問題解決能力の基盤が育成されます。
    • 実践的な活動を通じて、子どもは「数える」「分類する」「順序立てる」といったスキルを自然に習得し、初等教育での数学の成績向上に寄与します。

3. 非認知スキル(社会性・感情調整)の向上

  • 関連するECERS-3評価項目
    • 人間関係の質: 子ども同士、または子どもと保育者の関わり。
    • 感情表現と調整: 子どもが自分の気持ちを表現し、他者と調整する機会。
  • 学力への影響
    • 非認知スキル(自己制御力、協調性、忍耐力)の発達は、直接的な学力(特に数学や読解力)の向上に結びつきます。
    • 特に、感情コントロールや社会的スキルの発達が、小学校入学後の学習態度や集中力を高めます。

学力への間接的な影響

保育環境の質は、以下の要因を通じて学力に影響を及ぼします。

  • 子どもの興味の喚起: 質の高い教材や活動は、学習への興味を引き出します。
  • 家庭環境の改善: 保護者が質の高い教育に関心を持つようになり、家庭での教育活動が活性化します。
  • 長期的な影響: 幼児期の質の高い教育環境は、長期的な学習成果(高校・大学進学率の向上)にもつながる可能性があります。

留意点

ECERS-3は環境評価ツール

ECERS-3はあくまで保育環境の質を評価するツールであり、子どもの学力を直接測定するものではありません

学力は、家庭環境や遺伝的要因など、様々な要因によって影響を受けるため、ECERS-3の評価だけで学力を完全に説明することはできません。

因果関係の特定は困難

ECERS-3と学力の関連性を示す研究は、相関関係を示すものが多く、因果関係を特定するのは困難です。

質の高い保育環境が学力に好影響を与える可能性は高いと考えられますが、他の要因も考慮する必要があります。

まとめ

保育環境評価スケール(ECERS)は、保育園の質を客観的に評価するための重要なツールです。

質の高い保育環境は、子どもの認知能力や非認知能力の発達に大きく寄与します。

特に、豊富な教材、保育者との良好な関係、そして多様な活動が、子どもの学力向上に重要な役割を果たします。

しかし、評価結果だけに頼るのではなく、実際の保育園の雰囲気や保育者の対応をしっかり見極めることが大切です。

親として「ここなら子どもが安心して楽しく過ごせる」と感じられる保育園を選ぶ際の参考にしてください。

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