
大切な子どもの保育園選び、家からの距離だけで決めていませんか?
子どもが多くの時間を過ごす保育園の「保育環境の質」は、その後の成長や学びに大きく影響します。
この記事では、その「質の高い保育」を客観的に見極める国際的なツール、ECERS(エカーズ)を徹底解説。
利便性だけではない、子どもの可能性を広げる園選びのヒントを見つけましょう。
【前提知識】保育園選びで最重要視すべき「保育の質」とは?

「保育園は家から近いところを選べば十分」「設備や行事が豪華なら安心」――本当にそうでしょうか?
確かに通いやすさや利便性は大切です。
しかし、子どもが多くの時間を過ごす保育園の『保育の質』が、その後の学びや心の成長、そして将来の可能性にまで深く影響することが、近年の研究で明らかになっています。
保護者として、「先生が優しいか」「園の雰囲気はどうか」だけでなく、子どもが安心して遊び、自ら学び、成長できる環境が整っているかも選ぶ基準に加えたいところです。
ここで役立つのが、世界的に認められた保育環境評価スケール ECERS(エカーズ)です。
これを知ることで、保育園選びの基準がより具体的になり、子どもの将来につながる「質の高い保育」を見極める力を身につけられます。
通いやすさだけじゃない、保育園選びの新しい基準
保育園選びでまず考えるのは、距離や料金かもしれませんが、それだけでは子どもにとって最適な園を選んだとは言えません。
最近は、親の間で保育の質を見える化する視点が注目され始めています。
ここでいう「質」とは、単なる知識教育のレベルではなく、子どもが毎日安心して過ごし、心と身体が健やかに育つ環境のこと。
具体的には、遊びや学びの内容、先生との関わり方、環境の整え方など、日常の細かい要素すべてが「保育の質」を左右します。
通いやすさだけでなく、子どもの成長を長期的に支える、このような視点を持つことが、保育園選びの新しい基準となるでしょう。
「保育環境の質」が子どもの将来に与える影響とは
保育園での環境は、子どもの 社会性や非認知能力、言語力、学習意欲 に直結します。
例えば、先生が子ども一人ひとりに丁寧に関わり、豊かな遊びや体験を提供できる園では、子どもは自信を持って挑戦する力を身につけやすくなります。
逆に、物理的に整った園でも、関わりや活動の質が低いと、発達の伸びは限定的です。
研究でも、幼児期に「質の高い保育環境」で過ごした子どもは、将来の学力や社会性、自己肯定感に良い影響を受けることがわかっています。
つまり、保育園選びは将来の子どもの可能性を左右する大切な決断なのです。
保育環境評価スケール(ECERS)とは?メリットと評価の目的

「保育の質」を客観的に評価する基準として、世界中で使われているのが ECERS(Early Childhood Environment Rating Scale/エカーズ) です。
ECERSは、保育園での環境、活動、先生の関わり方などを多角的に観察し、点数で評価する仕組み。
保育園の「良いところ」「改善点」が見える化されるため、保護者が園を選ぶ際の指標としても注目されています。
日本でも徐々に導入が広がり、園の質向上や親との情報共有にも役立つツールとして注目されているのです。
ECERSの概要:「保育の質」を測る国際評価ツールとは?
ECERSは、アメリカで開発された 0歳〜5歳児対象の保育評価ツール で、現在は世界30カ国以上で導入されています。
評価の対象は、遊びや学びの環境、保育者の関わり方、生活習慣や安全管理など多岐にわたります。
評価結果は 7段階のスコア で示され、保育園の「強み」と「改善すべき点」が客観的にわかるのが特徴です。
これにより、保護者は「口コミや雰囲気だけでなく、実際に子どもがどのように過ごすか」を判断できるようになります。
1980年に初めて世に出て以来、時代に合わせて進化を続け、特に2015年に大きな改訂を経て「ECERS-3」という最新版が使われています。
ECERSの活用事例:日本と世界の導入状況
ECERSはアメリカをはじめ、カナダ、ヨーロッパ各国、オーストラリアなどで広く使われています。
国際的に認められたツールであるため、海外の研究でも保育の質と子どもの発達との関連性が多数報告されています。
日本でも、一部の自治体や保育園で導入され始めており、園の質向上や保護者への情報提供に活用されています。
導入園では、保育士の研修や環境改善に役立てられ、保護者も園選びの参考情報としてチェックできるようになっています。
なぜ保護者がECERSを知るべきか?「客観的な視点」を持つメリット
保育園選びは、子どもの将来に直結する大切な選択です。
しかし、園の雰囲気や行事だけでは「本当に質の高い保育か」を判断するのは難しいのが現実。
そこで ECERSの視点を知っておくことで、客観的に保育の質を見極める力 が身につきます。
園見学のときに「遊びの種類」「保育士の関わり方」「環境の整え方」など、ECERSで重視されるポイントを意識するだけでも、子どもに合った園を選ぶ判断材料が増えるのです。
ECERS-3の評価基準:質の高い保育を構成する6つの視点

ECERS-3は、保育園の環境や活動を6つの柱(サブスケール)に、さらに細かく35の項目が分類があり、合計でなんと461もの詳細な「指標」から評価します。
これらの視点を理解することで、「子どもが安心して学び、遊び、成長できる環境」が整っているかを、ご自身の目で判断できます。
👇これらの6つの視点(サブスケール)と、ECERS-3の詳細な評価項目は以下の通りです。
サブスケール | 項目数 | 項目番号 | 評価項目 | 概要 |
I. 空間と家具 | 5 | 1 | 室内空間 | 子どもが活動するための室内スペースの広さや、混雑していないか、遊びに適しているか。 |
2 | 養護・遊び・学びのための家具 | 椅子、テーブル、棚などが子どもの発達段階や体格に適しており、安全に使用できるか。 | ||
3 | 遊びと学びのための室内構成 | 活発な活動と静かな活動のエリア分け、環境構成の適切さ。 | ||
4 | ひとりまたはふたりのための空間 | 一人で落ち着いたり、少人数で遊んだりできるプライベートな空間があるか。 | ||
5 | 子どもに関係する展示 | 子どもの作品や写真、興味のある事物などが適切に展示され、子どもの生活を反映しているか。 | ||
II. 養護 | 6 | 6 | 安全 | 室内および屋外における子どもの安全管理、危険の予防、事故対応への配慮。 |
7 | 健康 | 病気の予防、感染症対策、子どもの健康状態のチェックなど、健康維持・管理。 | ||
8 | 食事・間食 | 食事や間食の時間における栄養・衛生面、子どもとの関わり方。 | ||
9 | 休息・睡眠 | 子どもが快適に休息・睡眠をとれる環境と、それに関する保育者の関わり。 | ||
10 | トイレ・排泄 | トイレや排泄時の衛生管理、子どものプライバシーへの配慮、自立に向けた支援。 | ||
11 | 環境の清潔さ | 室内、屋外、遊具、家具などの清潔が保たれているか、整理整頓されているか。 | ||
III. 言葉と文字 | 5 | 12 | 聴く | 保育者が子どもの話に耳を傾け、応答し、言葉のやり取りを豊かにしているか。 |
13 | 話す | 子どもが自分の考えを言葉で表現できるよう促し、語彙を増やす支援をしているか。 | ||
14 | 絵本 | 絵本の量、質、多様性、そして読み聞かせや、自由に絵本に触れる機会。 | ||
15 | 文字を読むこと | 文字や印刷物が環境の中にあり、子どもが文字に興味を持ち、それが読めるよう支援されているか。 | ||
16 | 文字を書くこと | 子どもが文字を書く活動に触れる機会があり、描画が奨励されているか。 | ||
IV. 活動 | 11 | 17 | 微細運動 | パズル、ビーズ、粘土など、手先の巧緻性を養う活動の機会と材料。 |
18 | 積み木 | 多様な種類の積み木やブロックが提供され、それを活用できるスペースと時間。 | ||
19 | 美術 | 描画、絵画、工作などの美術活動のための材料が豊富に用意され、自由に利用できるか。 | ||
20 | 音楽・運動 | 歌、楽器、身体を動かす遊びなど、音楽や運動を楽しむ機会。 | ||
21 | 砂・水遊び | 砂や水を使った遊びの機会が設けられ、適切な材料や用具が用意されているか。 | ||
22 | ドラマチック・プレイ(ごっこ遊び) | ごっこ遊びを促すための道具や服装が用意され、子どもが想像力を働かせられる環境か。 | ||
23 | 自然 | 自然物への触れ合い、植物や動物の観察など、自然に関する活動の機会。 | ||
24 | 算数/数 | 数、量、形など、算数の基礎となる概念に触れる遊びや材料。 | ||
25 | 科学 | 探索や実験を通して、科学的な事柄に興味を持ち、考える機会。 | ||
26 | アウトドア活動の空間と設備 | 屋外活動のための十分な広さと、多様な運動を可能にする遊具や設備。 | ||
27 | アウトドア活動 | 毎日、十分な時間、多様な遊びができるよう、屋外活動が計画・実行されているか。 | ||
V. 相互関係 | 5 | 28 | 肯定的な関わり | 保育者が子どもと温かく、一貫した肯定的な言葉や態度で関わり、信頼関係を築いているか。 |
29 | 肯定的な指導 | 肯定的な方法を用いて子どもの行動を導き、社会性や自己統制の発達を支援しているか。 | ||
30 | 仲間との関わり | 子ども同士の建設的な交流や協力が奨励され、保育者がそれを適切に支援しているか。 | ||
31 | 多様性への配慮 | 子どもの個性、多様な背景、特別なニーズが受け入れられ、尊重されているか。 | ||
32 | 権威主義的ではない保育者対子ども | 保育者が一方的ではなく、子どもの意見や選択を尊重し、対話的な関係を築いているか。 | ||
VI. 保育の構造 | 3 | 33 | 活動の提供方法 | 意図的な活動計画が柔軟に実行され、子どもが遊びや活動を自分で選択できる時間が十分にあるか。 |
34 | スケジュール | 日々のスケジュールが、子どもの発達のニーズや個々のリズムに配慮され、予測可能で一貫性があるか。 | ||
35 | 保護者との関わりと保育者への配慮 | 保護者との連携、情報共有、そして保育者自身の専門性や継続的な研修、ニーズへの配慮。 |
ここからは、ECERSが重視する6つの視点について、保護者目線で詳しく解説します。
【視点①:空間と家具】安心して主体的に活動できる「居心地の良い基地」
保育園の空間は、子どもの安心感や自主性に直結します。
- 子どもが自由に動ける広さが確保されているか
- 年齢に合った机や椅子、子どもが自分で出し入れできる収納があるか
- 遊びや学びがしやすい配置(動線)になっているか
こうした工夫がある園では、子どもは自分で遊びを選び、集中して活動できる時間を増やせます。
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【視点②:養護】安全・衛生・生活リズムを支える丁寧なケア
養護とは、生活の基本を支えるケアのことです。
- 安全管理(転倒防止、危険物の管理)が徹底されているか
- 衛生(手洗い、清掃、消毒)が適切に行われているか
- 生活リズム(昼寝、食事の時間)が個々のペースを尊重しつつ安定しているか
日常生活の質が安定していると、子どもは心身ともに安心し、学びや遊びに集中できるようになります。
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【視点③:言葉と文字】対話と探求心で「リテラシーの芽」を育む環境
言葉や文字に触れる環境は、幼児期のリテラシー形成に重要です。
- 絵本の読み聞かせが定期的、かつ丁寧に行われているか
- 子ども同士や先生との会話、質問を引き出すやり取りが豊富か
- 園内に文字や数字に親しむ掲示物(ポスター、表示など)が工夫されているか
言葉のやり取りが豊富な園では、語彙力・理解力・表現力が伸びやすく、後の学習にもつながります。
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【視点④:活動】遊びの多様性が生み出す学びの広がり
遊びは学びの基本です。ECERSでは活動の多様性が評価されます。
- 想像力を育むごっこ遊びの環境
- 手先や指先を使う構成遊び(ブロック、パズル)
- 自然との触れ合いや体を動かす運動
- 算数遊びや科学的な発見につながる素材
多様な遊びを通じて、問題解決力や創造性、協調性などが育まれます。
【視点⑤:相互関係】温かい人間関係が非認知能力を育てる
保育者と子ども、子ども同士の温かい関わりは、非認知能力の基盤になります。
- 先生が子どもの感情(嬉しい、悲しい、怒り)の表現や調整を丁寧に手助けしているか
- 子どもたちの自己肯定感を育む声かけがあるか
- 協力や順番を守るなど、社会性の習得を促す機会が豊富にあるか
信頼関係があると、子どもは安心して挑戦し、他者との関わりの中で大きく成長できます。
【視点⑥:保育の構造】子ども主体の一日を支えるスケジュール管理
日々の生活の流れや活動の計画と構造も保育の質に影響します。
- 子どもが主体的に遊びを選べる時間が十分に確保されているか
- 朝・昼・おやつ・昼寝などのルーティンが安定しているか
- 活動と休息のバランスが適切に取られているか
計画的で柔軟なスケジュールにより、子どもは安心感を得ながら主体的に行動でき、学びや遊びの質も高まります。
評価の仕組み:ECERSの点数(1点〜7点)が意味するもの
ECERSの評価結果を読み解くことは、園の「通知表」を見るのと同じです。
7段階評価の意味を理解することで、園の強みや改善点を客観的に把握できます。
評価は7段階:ECERSによる「保育の質」の見える化の仕組み
ECERSは、各項目を1点から7点の7段階で評価します。
評価点 | 評価 | 状態の目安 | コメント |
---|---|---|---|
1〜2点 | ❌ 要改善 | 基準に達していない状態 | 安全・衛生・環境整備など、基本的な条件が不十分です。改善が必要です。 |
3〜4点 | ⚠️ 可 | 最低限の基準を満たしている状態 | 最低限の保育環境は整っていますが、質の向上や工夫の余地があります。 |
5〜6点 | ✅ 良 | 良好な保育環境 | 子どもの発達や学びを十分にサポートできる環境です。さらに工夫するとより充実します。 |
7点 | 🌟 優 | 理想的な保育環境 | 子どもの自主性・学び・安心感を最大限に引き出せる理想的な環境です。 |
この評価により、「何ができているか」「どこを改善すべきか」が明確になり、園の質を具体的に理解できます。
総合的な平均点が5点以上であれば「質の高い保育」と見なされることが多いです。
評価は誰がどうやって行う?アセッサーによる客観的観察
ECERSの評価は、専門的な訓練を受けたアセッサーが行います。
アセッサーは、実際に園での活動や環境を数時間かけて観察し、チェックリストに沿って点数をつけます。
これにより、保護者の主観や園の説明ではなく、客観的な評価が得られるのが特徴です。
そのため、点数だけでなく評価内容のコメントも、園選びの参考として非常に有用です。
【科学的根拠】ECERSが証明する、質の高い保育が子どもの将来に与える影響

ECERSで評価される「質の高い保育」は、単に目の前の満足度が高いだけでなく、子どもの言語力、思考力、社会性、非認知能力に、長期的な好影響を与えることが多数の研究で証明されています。
視点・領域 | 育まれる力 | 具体的な環境・取り組みの例 | 発達への効果 |
---|---|---|---|
言葉と文字の環境 | ・語彙力 ・理解力 ・表現力 | 絵本の読み聞かせ、対話的な会話、感想を共有する時間 | 読み書きへの興味が高まり、リテラシー(読み書き力)の土台を形成する |
活動(遊び) | ・数的感覚 ・論理的思考 ・問題解決力 | ブロック・ごっこ遊び・パズル・自然体験など多様な活動 | 数量や形の理解、計画性・創造性を自然に育む |
相互関係 | ・社会性 ・感情調整力 ・共感力 | 友だちや先生との関わり、協力活動、感情表現のサポート | 非認知能力(自己調整・共感・協働力)が向上する |
保育全体の構造 | ・学びへの意欲 ・集中力 ・自己肯定感 | 安定したスケジュール、子ども主体の活動時間 | 小学校以降の学習・社会生活への学びの土台を築く |
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【見学実践】ECERSの6つの視点を活かした保育園選びのチェックリスト

保育園選びでは、園の雰囲気や口コミだけに頼らず、ECERSで重視される視点を意識して見学・判断することが重要です。
見学でチェックしたい「環境の6つの視点」リスト
園見学では、ECERS-3で示される6つの視点を意識して、チェックリストを持って臨みましょう。
視点 | 主なテーマ | チェックポイント | 子どもへの効果 |
---|---|---|---|
① 空間と家具 安心して主体的に活動できる「居心地の良い基地」 | ・環境構成 ・家具配置 | ✅自由に動ける広さがあるか ✅年齢に合った机・椅子があるか ✅子どもが自分で出し入れできる収納があるか ✅遊びや学びがしやすい動線になっているか | 安心感と主体性が育まれ、集中して活動できる時間が増える |
② 養護 安全・衛生・生活リズムを支える丁寧なケア | ・健康 ・安全 ・生活習慣 | ✅転倒防止や危険物の管理が徹底されているか ✅手洗いや清掃、消毒が適切に行われているか ✅個々の生活リズム(睡眠・食事)が尊重されているか | 心身の安定につながり、学びや遊びに集中できる |
③ 言葉と文字 対話と探求心で「リテラシーの芽」を育む環境 | ・言語環境 ・表現 | ✅絵本の読み聞かせが定期的・丁寧に行われているか ✅質問や会話のやり取りが豊富か ✅文字・数字の掲示物などが工夫されているか | 語彙力・表現力が伸び、学習への興味が広がる |
④ 活動 遊びの多様性が生み出す学びの広がり | ・遊び ・活動内容 | ✅ごっこ遊びや構成遊びの環境が整っているか ✅自然体験や運動の機会があるか ✅算数や科学につながる素材が用意されているか | 創造性・協調性・問題解決力が育まれる |
⑤ 相互関係 温かい人間関係が非認知能力を育てる | ・人間関係 ・情緒支援 | ✅先生が感情表現を丁寧にサポートしているか ✅自己肯定感を育む声かけがあるか ✅協力や社会性を学ぶ機会があるか | 安心して挑戦でき、他者との関わりの中で成長する |
⑥ 保育の構造 子ども主体の一日を支えるスケジュール管理 | ・時間構成 ・計画性 | ✅自由遊びの時間が確保されているか ✅生活リズム(食事・昼寝など)が安定しているか ✅活動と休息のバランスが取れているか | 安定した生活リズムの中で主体性と集中力が育まれる |
先生や子どもの関わり方を観察するポイント
「質の高さ」は物的な環境だけでなく、人との関わり方に表れます。
観察対象 | チェックポイント | 期待できる効果・意味 |
---|---|---|
先生の関わり方 | ✅一人ひとりの子どもの目線に合わせて話しているか | 子どもが安心して話しやすく、自己表現力や信頼関係が育まれる |
✅「なぜ?」「どうしたい?」と問いかけ、丁寧に応えているか | 思考力・主体性を引き出し、自分で考える力を育む | |
子ども同士の関わり | ✅協力して活動している場面があるか | 協調性や社会性を育む |
✅トラブルを自分たちで解決しようとしているか | 自己調整力や問題解決能力の発達を促す |
家庭でも取り入れられる“質の高い環境”づくり
園で見た良い環境を家庭に取り入れることは、子どもの成長をさらに後押しします。
カテゴリ | 具体的な工夫 | 期待できる効果・意味 |
---|---|---|
遊びのスペース | おもちゃを分類し、自分で選んで片付けられる収納にする | 自主性・整理整頓能力・主体的な遊びの習慣を育む |
言葉のやり取り | 毎日数分の絵本の読み聞かせ+感想や会話をする | 語彙力・理解力・表現力を高め、リテラシー形成の土台に |
生活リズム | 食事・睡眠時間を大きくずらさず安定させる | 心身の安心感・集中力の向上・学びや遊びへの積極性を促す |
ECERS評価の限界:点数だけではわからない保育園選びの留意点とFAQ

ECERSは非常に強力なツールですが、点数だけが全てではないことも知っておく必要があります。
留意点:点数だけでは測れない「保育士との相性」と「園の雰囲気」
ECERSは「環境の質」を測るものであり、個々の保育士の資質や、お子さんとの「相性」までは測れません。
評価結果はあくまで一つの客観的な指標として捉え、最終的にはご家庭の教育方針や、実際に園を訪れて感じる雰囲気や保育士の生きた関わりを含めて、総合的に判断することが重要です。
FAQ:ECERSの点数が低い園は避けるべき?
ECERSの点数が低い、または未評価の園が「悪い園」だと断定することはできません。
【考え方】
- 低得点の園:
点数が低い場合は、改善すべき課題が明確にあることを示しています。
見学時に「なぜその点数なのか」「今後どのように改善していくか」という園の姿勢を確認しましょう。 - 未評価の園:
日本ではまだECERS導入が発展途上です。
評価を受けていなくても、ECERSの6つの視点を意識してご自身でチェックし、園の理念や熱意を感じ取ることが大切です。
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ECERS評価の限界と、賢く活用するための注意点
保育環境評価スケール(ECERS)が、質の高い保育環境を見極める上で非常に有効なツールであることは、 ...
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まとめ:利便性だけでない、子どもの輝く未来を選ぶために
保育園選びは、通いやすさや設備だけでなく、「子どもがどんな時間を過ごすか」を見極める大切な選択です。
ECERS(エカーズ)を知ることで、保護者は保育園の雰囲気だけでなく、子どもが安心して学び、遊び、成長できる保育の質を客観的に見る視点を持てるようになります。
園見学では、ECERSが示す6つの視点(空間、養護、言葉、活動、関係性、構造)を意識するだけでも、先生の関わり方や子どもたちの表情、環境の整え方など、これまで見えていなかった「本当の質」が見えてくるはずです。
最終的に大切なのは、わが子にとって最も安心でき、伸び伸びと成長できる園を選ぶこと。
ECERSは、その判断を助ける「羅針盤」です。
保護者が保育の質を理解し、主体的に園を選ぶことこそが、子どもの未来を輝かせる第一歩になるでしょう。
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