
公園で友達と楽しそうに遊ぶわが子、難しい積み木に何度も挑戦する姿。
「勉強はまだ先のこと」と思いつつも、この時期にどんな力を育んであげたら良いのだろう?と考えることはありませんか?
「非認知能力」って聞いたことはありますか?
自己肯定感、意欲、忍耐力…。
学力といった目に見える力とは違い、子どもの内面に宿るこの力こそが、将来の成功や幸福の鍵を握ると言われています。
実は、幼児期に育まれる【非認知能力】と呼ばれる力は、学力だけでは測れない、お子様の将来を大きく左右する土台となるものなのです。
「非認知能力」って、具体的にどんな力?そして、なぜ今、幼児教育の現場でこんなにも重要視されているのでしょうか?
この記事では、幼児教育において重要なこの「非認知能力」について、その正体から、お子様の可能性を広げるためのヒント、そしてその重要性までを詳しく解説します。
3歳児や4歳児の幼児教育の全体像や、親が知るべき発達特性については、こちらの記事【 3歳児の幼児教育ロードマップ 】【 4歳児の発達をグーンと伸ばす!親が知っておきたい幼児教育のコツ 】で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
「非認知能力」とは?~学力だけじゃない、才能を伸ばす隠れた羅針盤

「非認知能力」という言葉を、最近よく耳にするようになったと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
それは、子どもたちの成長において、テストの点数や知識量といった目に見える学力だけではなく、もっと根源的な力、いわば「生きる力」が重要視されるようになってきたからです。
では、この【非認知能力】とは一体何なのでしょうか?
それは、目標に向かって粘り強く努力する力、自分の感情をコントロールする力、周りの人と協力して何かを成し遂げる力、新しいことに興味を持つ好奇心、そして何よりも、自分自身を信じる力といった、数値で測ることのできない、内面的な力のことです。
まるで、土の下でしっかりと根を張る植物のように、目には見えにくいけれど、子どもたちが将来、困難に立ち向かい、自分らしく輝いていくための、なくてはならない土台となる力と言えるでしょう。
具体的には、以下のような要素が挙げられます。
自己肯定感:
「自分はできる」「自分は価値がある」と、ありのままの自分を肯定的に捉える感覚。
これは、挑戦する勇気や困難を乗り越えるエネルギーの源となります。
(例:幼児期に、大人が無条件に愛情を注ぎ、小さな成功体験を積み重ねることで育まれます。)
意欲:
「やってみたい」「もっと知りたい」という、自ら目標を見つけ、それに向かって積極的に取り組む力。
(例:幼児期に、子どもの興味関心に寄り添い、自由に探索できる環境を与えることで育まれます。)
忍耐力:
困難や挫折に直面しても、諦めずに粘り強く努力を続ける力。
「最後までやり抜く力」とも言えます。
(例:幼児期に、少し難しいパズルや積み木に時間をかけて取り組む経験を通して育まれます。)
自制心:
自分の感情や衝動をコントロールし、状況に合わせて適切な行動を選択する力。
(例:幼児期に、「順番を守る」「少し待つ」といったルールを理解し、守る経験を通して育まれます。)
コミュニケーション能力:
自分の考えや気持ちを相手に分かりやすく伝え、相手の気持ちを理解しようと努める力。
(例:幼児期に、友達と遊んだり、絵本を読んでもらったりする中で、言葉や表情を使ったやり取りを通して育まれます。)
問題解決能力:
目の前の課題に対して、様々な角度から考え、解決策を見つけ出す力。
(例:幼児期に、積み木が崩れた時に「どうすれば高く積めるか」を試行錯誤する中で育まれます。)
創造性:
既存の枠にとらわれず、新しいアイデアや発想を生み出す力。
(例:幼児期に、自由な発想で絵を描いたり、ごっこ遊びを展開したりする中で育まれます。)
これらの非認知能力は、学力という目に見える力と相互に影響し合いながら、子どもたちの成長を支えていきます。
そして、その重要性は、幼児期という早い段階から意識し、育んでいくことで、より大きく開花すると言えるでしょう。
非認知能力が、なぜ今このように重要視されるようになっているのかについては、次のセクションで詳しく見ていきましょう。
なぜ今、「非認知能力」が重要視されるようになったのか

少し前までは、子どもたちの成長といえば、学校の成績や学力が主な関心事でした。
良い大学に入り、良い会社に就職することが、将来の成功への道筋だと考えられていた時代です。
しかし、社会が大きく変化する中で、学力だけでは予測できない、様々な課題に直面する場面が増えてきました。
例えば、AI(人工知能)の進化によって、これまで人間が行ってきた多くの仕事が自動化される可能性があります。
このような未来においては、既存の知識をどれだけ持っているかよりも、新しい状況に柔軟に対応できる力、他者と協力して新しい価値を生み出す力、そして何よりも、自ら考え、行動する意欲が不可欠となります。
また、グローバル化が進み、多様な価値観を持つ人々と協働する機会も増えています。
自分の意見をしっかりと伝え、相手の立場を理解するコミュニケーション能力や、予期せぬ問題に冷静に対処できる問題解決能力といった、非認知能力の重要性はますます高まっているのです。
幼児教育の現場においても、早くからこの変化に対応しようとする動きが活発になっています。
知識を詰め込む早期教育ではなく、遊びを通して主体性や探求心を育んだり、友達との関わりの中で社会性や情緒的な発達を促したりする教育が見直されています。
なぜなら、幼児期に育まれた非認知能力こそが、その後の学習意欲を高め、困難を乗り越えるための精神的な強さを養う土台となることが、多くの研究で明らかになってきているからです。
さらに、非認知能力は、子どもたちの幸福感にも深く関わっています。
自己肯定感が高く、他者との良好な関係を築ける子どもは、ストレスを感じにくく、困難な状況でも前向きに生きる力を持ちやすいと言われています。
幼児教育を通して非認知能力を育むことは、単に将来の成功のためだけでなく、子どもたちが 今を幸福に生き、豊かな人生を送るための投資なのです。
このように、社会の変化、科学的な研究の進展、そして子どもたちの幸福な未来への願いが合わさり、「非認知能力」は、現代の幼児教育において、最も重要なキーワードの一つとなっているのです。
幼児期の発達段階と非認知能力の育み方

幼児期は、心と体が著しく成長する大切な時期です。3歳、4歳、5歳と、それぞれの年齢で発達の特徴があり、非認知能力の育まれ方や、私たち大人がどのように関わるべきかも少しずつ変わってきます。
ここでは、それぞれの発達段階を踏まえながら、家庭や保育の現場でできる非認知能力の育み方のヒントを見ていきましょう。
3歳頃の発達と育み方のヒント
3歳頃になると、言葉の理解が進み、自分の気持ちを言葉で伝えようとし始めます。また、「自分でやりたい」という自我意識が芽生え、身の回りのことを自分でしようとする意欲が出てきます。
自己肯定感を育む:
できたことを具体的に褒める
(例:「自分でボタンを留められたね!」「最後まで頑張って描いたね!」)。
無条件に愛情を伝え、安心できる環境を作ることが大切です。
「大好きだよ」「いつもそばにいるよ」といった言葉で、情緒的な安定感を育みます。
意欲を育む:
子どもが興味を持った遊びや活動には、できる限り時間をかけて付き合い、見守りましょう。
「やってみたい」という気持ちを尊重し、「失敗しても大丈夫だよ」と励ますことで、挑戦する意欲を育てます。
忍耐力の基礎を育む:
少し難しいパズルやおもちゃに挑戦する際に、すぐに答えを教えるのではなく、「もう少し考えてみようか」「どこが難しいかな?」と声をかけ、自分で考える力を促します。
最後までやり遂げた時には、結果だけでなく、頑張った過程を褒めてあげましょう。
自制心の基礎を育む:
簡単なルールのある遊び(順番を守る、遊びを終える時間など)を通して、ルールを守ることの大切さを伝えます。
衝動的な行動を頭ごなしに叱るのではなく、「今は〇〇の時間だよ」「順番だから少し待とうね」と、言葉で説明することが大切です。
4歳頃の発達と育み方のヒント
4歳頃になると、想像力が豊かになり、ごっこ遊びを通して様々な役割を演じることを楽しみます。
友達との関わりも深まり、協力したり、時には衝突したりする中で、社会性の基礎を築きます。
コミュニケーション能力を育む:
ごっこ遊びに積極的に参加し、子どもの言葉に耳を傾け、一緒に想像することを楽しみましょう。
友達との間で意見が衝突した際には、「どうすればみんなが楽しく遊べるかな?」と、子どもたち自身で解決策を見つけるように促します。
協調性を育む:
グループでの遊びや共同作業(一緒に絵を描く、積み木で何かを作るなど)を取り入れ、「みんなで力を合わせると楽しいね」という経験を意識させます。
役割分担のある遊びを通して、自分の役割を理解し、責任感を持つことを学びます。
問題解決能力を育む:
遊びの中で生じるトラブルや課題に対して、「どうしたら良いと思う?」と子どもに問いかけ、自分で考える機会を与えます。
様々な素材や道具を使った創造活動を通して、試行錯誤する楽しさを経験することが、柔軟な思考力を養います。
情緒的な感情のコントロールを育む:
嬉しい、悲しい、怒りといった様々な感情があることを伝え、それぞれの感情に寄り添いながら、適切な表現方法を一緒に考えます。
絵本や物語を通して、登場人物の気持ちを想像することで、共感力を育みます。
5歳頃の発達と育み方のヒント
5歳頃になると、論理的な思考力が芽生え始め、「なぜ」を知りたがるようになります。
また、社会的なルールへの理解も深まり、集団の中で自分の役割を意識し、行動できるようになります。
思考力を育む:
「なぜそうなるの?」「どうしてこうなったと思う?」といった子どもの疑問に対して、一緒に考えたり、図鑑や絵本で調べたりする時間を持ちましょう。
順序を考えさせる遊び(順番に何かをする、論理パズルなど)を取り入れることで、論理的な思考力を養います。
自己組織化能力を育む:
自分の目標を立て、計画的に取り組むことを促します(例:「今日はこの絵を完成させる」「明日は〇〇ちゃんと遊ぶ約束をする」など)。
時間を意識させる遊びや活動(タイマーを使って片付けをするなど)を通して、時間管理の基礎を意識させます。
社会的能力をさらに伸ばす:
集団での遊びや活動を通して、ルールを守ることの大切さ、相手の意見を聞くことの重要性を意識させます。
友達との間で生じる意見の対立に対して、暴力的な解決ではなく、話し合いによって解決する方法を一緒に探ります。
やり抜く力を育む:
少し複雑な課題や目標に対しても、簡単に諦めさせるのではなく、「ここまで頑張ったね」「あと少しで終わりそうだね」と励まし、達成感を味わえるようにサポートします。
関連シリーズ
幼児期における非認知能力を遊びを通して育む具体的なアイデアについては、こちらの記事【遊びで伸ばす非認知能力|3歳からの簡単アクティビティ5選】もぜひ参考にしてみてください。
非認知能力を育むための家庭でのヒント

家庭は、子どもが最も長い時間を過ごし、基本的な生活習慣や人との関わり方を学ぶ、非認知能力を育むための最初の、そして最も重要な場所です。
特別な教材や方法を用意する必要はありません。
日々の暮らしの中で、少し意識を変えるだけで、子どもたちの内なる力を大きく育てることができます。
ここでは、家庭でできる具体的なヒントをご紹介します。
1. 子どもの「やってみたい」を応援する – 自主性の尊重
子どもが何かに関心を示したり、「自分でやってみたい」と言ったりした時は、できる限りその気持ちを尊重しましょう。
「危ないから」「時間がかかるから」とすぐに制止するのではなく、安全に配慮しながら、見守る姿勢が大切です。
たとえ失敗しても、「次はどうすればうまくいくかな?」と声をかけ、挑戦する意欲を育てます。
関連シリーズ
子どもの「やる気」を引き出すためには、内発的な動機づけが重要です。
その詳しい方法については、こちらの記事【やる気を引き出す「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の効果的な組み合わせ方】をご覧ください。
2. 小さな「できた!」を積み重ねる – 成功体験の重視
子どもが何かを達成した時には、その結果だけでなく、努力した過程を具体的に褒めてあげましょう。
「〇〇ができたね、すごい!」「最後まで諦めずに頑張ったね!」といった言葉かけは、自己肯定感を高め、次の挑戦への意欲に繋がります。
目標は、子どもの発達段階に合わせて、少し頑張れば達成できる程度の小さなものから始めるのがおすすめです。
3. 「失敗は学びのチャンス」と捉える – 失敗を恐れない環境づくり
失敗した時に頭ごなしに叱るのではなく、「どうしてうまくいかなかったのかな?」「次はどうすればうまくいくと思う?」と、一緒に考える姿勢を持ちましょう。
失敗から学ぶことの大切さを伝えることで、問題解決能力やレジリエンス(困難を乗り越える力)を育みます。
4. 一緒に楽しむ時間 – 親子のコミュニケーション
絵本を読んだり、一緒に遊んだり、散歩に出かけたりする日常生活の中で、子どもとじっくり向き合う時間を意識して作りましょう。
子どもの話に耳を傾け、気持ちに共感することで、信頼関係が深まり、情緒的な安定に繋がります。
関連シリーズ
親子で一緒に遊ぶことは、非認知能力を育む上で非常に効果的です。
具体的な遊びのアイデアについては、こちらの記事【なぜ非認知能力が重要なのか?親ができる3つのこと】をご覧ください。
5. 五感を刺激する – 様々な経験の提供
自然の中で遊ぶ、色々な素材に触れる、音楽を聴く、絵を描くなど、様々な経験を通して、子どもの好奇心や探求心を刺激しましょう。
これらの経験は、豊かな感性や創造性の土台となります。
関連シリーズ
音楽やアート体験は、非認知能力の育成に大きな影響を与えます。
家庭でできる音楽教育については【家庭でできる音楽教育と非認知能力の育成】、
親子で楽しめるアート体験については【アート体験&鑑賞で子どもの才能開花!親子で育む非認知能力】をご覧ください。
また、自然体験を通して非認知能力を伸ばすヒントは【自然体験で非認知能力を伸ばす!親子で楽しめるアウトドア学習】でご紹介しています。
6. 親自身がモデルとなる – 大人の姿勢
子どもは、親の姿をよく見ています。
親自身が目標に向かって努力する姿、困難に立ち向かう姿、他人を思いやる姿を見せることは、子どもにとって何よりの学びとなります。
親が楽しんで生活している姿を見せることも、子どもの意欲や好奇心を刺激するでしょう。
7. 家庭のルールを一緒に作る – 社会性の基礎
家族で話し合って、守るべきルールを作ることは、子どもの責任感や社会性を育む上で大切です。
ルールを守れた時には褒め、守れなかった時には、なぜルールが必要なのかを説明することで、社会性を育みます。
8. デジタルデバイスとの適切な距離感 – バランスの重要性
スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスは便利なツールですが、長時間使用は、集中力やコミュニケーション能力の発達に影響を与える可能性があります。
家族でルールを決め、適切な距離感を保つように心がけましょう。
これらのヒントは、特別な才能がなくても、今日からすぐに実践できるものばかりです。
焦らず、子どものペースに合わせて、楽しみながら非認知能力を育んでいきましょう。
関連シリーズ
幼児教育におけるスマホは大きな影響を与えます。
親子でスマホと上手に付き合う方法については、こちらの記事【【最新研究】幼児教育にスマホは悪影響?メリット・デメリットを徹底解説!】をご覧ください。
非認知能力と習い事

幼児期における習い事は、技術や知識を習得するだけでなく、非認知能力を育むための貴重な機会でもあります。
様々な活動を通して、子どもたちは集中力、忍耐力、コミュニケーション能力、創造性など、将来にわたって役立つ内面的な力を身につけていきます。
ここでは、いくつかの習い事を例に挙げながら、どのように非認知能力が育まれるのかを見ていきましょう。
音楽
楽器の演奏や合唱などの音楽活動は、集中力や聴く力、表現力を養います。また、集団で演奏する経験は、協調性や社会的なスキルを育む良い機会となります。
目標に向かって練習を続けることで、忍耐力や自己規律も身につくでしょう。
関連シリーズ
家庭でできる音楽教育を通して非認知能力を育むヒントについては、こちらの記事【家庭でできる音楽教育と非認知能力の育成】をご覧ください。
スポーツ
スイミング、体操、サッカーなどのスポーツは、体力を向上させるだけでなく、目標達成意欲、チームワーク、リーダーシップなどを育みます。
困難に立ち向かい、勝利や挫折を経験する中で、精神的な安定や自己制御も養われるでしょう。
関連シリーズ
運動習慣を通して子どものやる気を引き出す方法については、こちらの記事【運動×非認知能力:子どものやる気を引き出す運動習慣の作り方】をご覧ください。
絵画・造形
絵を描いたり、粘土で何かを作ったりする創造活動は、豊かな想像力や発想力、そして自分の考えを形にする表現力を育みます。
試行錯誤を繰り返しながら作品を完成させる経験は、集中力や忍耐力を養うとともに、自己表現の楽しさを意識させるでしょう。
関連シリーズ
親子で楽しめるアート体験を通して非認知能力を育むヒントについては、こちらの記事【アート体験&鑑賞で子どもの才能開花!親子で育む非認知能力】をご覧ください。
プログラミング
幼児向けのプログラミング教室では、遊び感覚で論理的思考力や問題解決能力、創造性を養うことができます。
試行錯誤しながら課題をクリアしていく経験は、粘り強さや自律学習能力を育む土台となるでしょう。
大切な視点 – 非認知能力を育むことを意識する
習い事を選ぶ際や、子どもが取り組む様子を見守る際に大切なのは、「技術を習得させる」ことだけを目的にしないことです。
それよりも、その活動を通して、子どもたちがどのような非認知能力を育んでいるのか、という視点を持つことが重要です。
例えば、
・音楽のレッスンで困難に直面した時に、「諦めずに頑張ってみよう」と励ますこと
・スポーツのチームワークで自分の役割を果たすことの大切さを意識させること
・アートの創造活動で自分の考えを自由に表現することを促すこと
などが、非認知能力の成長に繋がります。
習い事は、子どもたちの可能性を広げ、様々な非認知能力を育むための素晴らしい機会です。
子どもの興味や発達段階に合わせて、適切な習い事を選び、その過程を温かく見守ることが、子どもたちの未来を豊かにする投資と言えるでしょう。
年齢別の非認知能力の育み方

非認知能力は、子どもの成長とともに、その育み方も変化していきます。
それぞれの発達段階の特徴を理解し、適切な働きかけを行うことが大切です。
ここでは、乳幼児期、学童期、思春期の3つの時期に分けて、非認知能力を育むための具体的な方法を見ていきましょう。
乳幼児期(0〜6歳) – 自己肯定感の土台を築く
この時期は、情緒的な安定と自己肯定感の土台を築くことが最も重要です。
無条件の愛情を注ぐ:
抱きしめたり、優しい言葉をかけたりすることで、子どもは安心感を覚え、自己肯定感の土台が育まれます。
「良い子だね」だけでなく、「生まれてきてくれてありがとう」といった存在自体を肯定する言葉かけも効果的です。
五感を刺激する遊びを取り入れる:
自然に触れる、様々な素材で遊ぶ、音楽を聴くなど、五感を豊かに刺激する経験は、好奇心や探求心を育みます。
砂場遊び、水遊び、絵の具遊び、音楽に合わせて体を動かす遊びなどがおすすめです。
大人がモデルを見せる:
大人が楽しんで物事に取り組む姿は、子どもの意欲や好奇心を刺激します。
絵本を読む、料理をする、庭の手入れをするなど、日常生活の中で大人が楽しんでいる様子を見せることが大切です。
簡単な選択肢を与える:
服を選ぶ、おもちゃを選ぶなど、子ども自身が選ぶ機会を作ることで、自主性や自己決定力を育みます。
「どっちが良い?」と問いかけ、子どもの意思を尊重しましょう。
学童期(6〜12歳) – 目標達成力と問題解決能力を伸ばす
この時期は、目標を設定し、それを達成する経験を通して、自己管理能力や達成感を育むことが大切です。
目標設定と振り返りの習慣をつける:
短期的な目標(例:宿題をいつまでに終わらせる)と長期的な目標(例:縄跳びが〇回跳べるようになる)を設定し、達成できたかどうかを振り返る習慣をつけましょう。
目標達成シートなどを活用するのも効果的です。
役割分担をする:
家庭内でお手伝いをしたり、学校で係活動をしたりすることで、責任感や協調性を育みます。
洗濯物をたたむ、お風呂掃除をする、給食当番をするなど、年齢に合わせた役割を与えましょう。
ディスカッションをする機会を作る:
ニュースについて話し合ったり、本を読んで感想を言い合ったりすることで、論理的思考力やコミュニケーション能力を育みます。
「どう思う?」と問いかけ、子どもの意見をじっくりと聞くことが大切です。
思考力を養う遊びを取り入れる:
将棋、チェス、オセロなどのボードゲームや、ジグソーパズル、ルービックキューブなどは、戦略的思考や問題解決能力を養うのに役立ちます。
思春期(12〜18歳) – 自己理解を深め、自立心を育む
この時期は、自分の個性や価値観を理解し、将来に向けて自立していくための力を養うことが重要です。
自分の強みや弱みを認識する:
自己分析を通して、自分の得意なこと、苦手なことを理解することで、自己肯定感や自己効力感を高めます。
ストレングスファインダーなどのツールを活用するのも良いでしょう。
多様な価値観に触れる機会を作る:
異文化交流やボランティア活動を通して、多様な価値観に触れることで、視野を広げ、共感力や寛容性を育みます。
将来について考える機会を作る:
キャリアについて調べたり、進路について話し合ったりすることで、将来への意識を高め、目標達成意欲を喚起します。
適度な距離感を保つ:
子どもの自立心を尊重し、過干渉にならないように注意しながらも、必要な時にはサポートする姿勢が大切です。
これらの年齢別の育み方を参考に、お子様の成長に合わせて、非認知能力を育むための働きかけを意識してみてください。
次のセクションでは、具体的な事例を通して、非認知能力がどのように育まれるのかを見ていきましょう。
具体的な事例 – 日常生活で育まれる非認知能力

非認知能力は、特別なトレーニングや教材を使わなくても、日々の生活の中で自然と育まれていきます。
ここでは、幼児期によく見られる場面を通して、どのように非認知能力が育まれていくのか、具体的な例を見ていきましょう。
事例1:自己肯定感を育む – 失敗しても大丈夫
3歳になったばかりのケンタくんは、積み木で高い塔を作ろうとしましたが、途中で崩れてしまいました。
ケンタくんは少し焦った様子になり、泣き出してしまいました。
お母さんは、「残念だったね。でも、ここまで高く積めたのはすごいよ。もう一度、どこを工夫したら高く積めるか一緒に考えてみようか?」と優しく声をかけました。
- 育まれた非認知能力:
失敗体験を受け止め、次の行動を促す声かけは、ケンタくんの自己肯定感を育みます。
「また挑戦してみよう」という意欲や、困難を乗り越えるための精神的な安定の土台となります。
事例2:意欲と忍耐力を育む – 最後までやり遂げる楽しさ
4歳のサキちゃんは、少し複雑な絵本に興味を持ちましたが、文字が多くてなかなか一人では読めません。
何度も「読んで」と大人にお願いしていましたが、ある日、「自分で読んでみたい」と言い出しました。
最初は難しそうでしたが、絵をヒントにしたり、知っている文字を探したりしながら、少しずつ読み進めていきました。
時間がかかりましたが、最後まで読み終えた時、サキちゃんはとても嬉しそうな笑顔を見せました。
- 育まれた非認知能力:
難しいことに自ら挑戦する意欲、途中で諦めずに粘り強く取り組む忍耐力、そして目標を達成した時の満足感を経験することで、サキちゃんの「やり抜く力」が育まれました。
事例3:コミュニケーション能力と協調性を育む – みんなで一緒に
5歳のユウくんは、友達と公園で砂のお城を作って遊ぶました。
最初はそれぞれが別々の場所で砂を掘っていましたが、次第に「一緒にお城を作ろう」という話になりました。
「僕は壁を作る」「私はお堀を作る」と役割分担をしたり、「もっと大きな塔にしよう」とアイデアを出し合ったりする中で、ユウくんは自分の考えを伝えたり、友達の意見を聞いたりするコミュニケーション能力と、みんなで協力して一つの目標を達成する協調性を育みました。
- 育まれた非認知能力:
友達との活発なやり取りを通して、言葉や態度で自分の考えや気持ちを伝え合うコミュニケーション能力、そして共通の目標に向かって協力する協調性が育まれました。
事例4:問題解決能力と創造性を育む – 工夫する楽しさ
4歳のミナちゃんは、積み木で作ったバスがうまく走りません。
「どうすれば走るかな?」と考えたミナちゃんは、タイヤに見立てた丸い積み木をつけてみたり、傾斜をつけて滑らせてみたりと、色々なアイデアを試しました。
最終的に、少しずつ形を変えながら、自分がイメージするバスを走らせることに成功しました。
- 育まれた非認知能力:
目の前の課題に対して、様々な方法を試行錯誤する問題解決能力、そして既存の形にとらわれず、新しいアイデアを生み出す創造性が育まれました。
これらの例のように、特別な方法を用いなくても、子どもたちは日々の生活の中で様々な非認知能力を発達させています。
私たち大人が、子どもの行動を注意深く観察し、適切な声かけや環境を用意することで、その成長をさらに後押しすることができるのです。
家庭以外での育み – 学校や地域社会の役割

非認知能力を育むのは、家庭だけの役割ではありません。
子どもたちが日々を過ごす学校や地域社会も、多様な経験を通して非認知能力を成長させるための重要な舞台となります。
学校での育み
幼稚園や保育園、小学校といった学校は、集団生活を通して社会性や協調性を育む上で大きな役割を果たします。
集団活動:
友達と協力して何かを成し遂げる活動(例えば、遊び、プロジェクト、発表会など)は、コミュニケーション能力やチームワークを養います。
自分の役割を理解し、責任を果たす経験は、自己規律や社会的責任感を育む土台となります。
学びの過程:
授業を通して、子どもたちは課題に自ら取り組み、解決策を見つけ出す経験を積みます。
教師からのフィードバックを受けながら、試行錯誤する中で、問題解決能力や批判的思考が育まれます。
人間関係:
友達との間で喜びや葛藤を経験する中で、相手の気持ちを理解する共感性や、衝突を乗り越えるための交渉力、そして多様な価値観を受け入れる寛容性が育まれます。
学校行事:
運動会や文化フェスティバルなどの学校行事は、目標に向かって努力する大切さ、仲間と協力する喜び、そして達成を分かち合う情緒的な経験を意識させる貴重な機会となります。
地域社会での育み
地域社会との関わりも、子どもたちの非認知能力を豊かに育みます。
地域活動への参加:
ボランティア活動や地域のお祭り、スポーツイベントなどへの参加は、社会の一員としての意識や、他者への思いやり、そして公共のルールを守る大切さを意識させます。
多様な世代との交流:
地域のお年寄りや様々な専門家と触れ合う機会は、コミュニケーション能力を高めるだけでなく、多様な価値観や生き方を学ぶ貴重なチャンスとなります。
自然体験:
地域の自然に触れる機会(公園での遊び、ハイキング、公共の菜園での活動など)は、探求心や好奇心を刺激し、五感を通して学ぶ楽しさを意識させます。
また、自然の雄大さやサイクルを感じることは、情緒的な豊かさにも繋がります。
地域の文化に触れる:
地域の博物館や歴史的な場所を訪れたり、伝統的な芸術や工芸に触れたりする経験は、感性や創造性を刺激し、文化的なアイデンティティを育む土台となります。
家庭、学校、そして地域社会。
それぞれの場所が持つ独特な特性を活かしながら、子どもたちの非認知能力は多方面に育まれていきます。
私たち大人は、それぞれの場所で子どもたちが様々な経験を通して成長できるよう、温かい目で見守り、適切なサポートをしていくことが大切です。
非認知能力と脳の発達 – 幼児期からの育みが重要

非認知能力の発達は、脳の成長と密接に関わっています。
特に、思考、判断、感情のコントロールなどを司る重要な部分である前頭前野は、幼児期から青年期にかけて大きく発達します。
この前頭前野の発達を促すことが、非認知能力の向上に繋がると言えるでしょう。
幼児期(0〜6歳):感情の基礎と前頭前野の萌芽
幼児期の前頭前野は、まだ発達の初期段階にあります。
そのため、子どもたちは感情のコントロールが難しく、衝動的な行動に出やすい傾向があります。
しかし、この時期に愛情に満ちた安定した環境で育つことは、前頭前野の発達を大きく促し、自己肯定感や信頼感といった非認知能力の基礎を築きます。
大人が子どもたちの心のニーズに寄り添い、安心感を与えることが、健全な脳の発達と非認知能力の育成には不可欠です。
学童期(6〜12歳):論理的思考と計画性の芽生え
学童期に入ると、前頭前野の発達が進み、少しずつ論理的に考えたり、計画を立てたりすることができるようになります。
この時期に、目標達成の経験を積み重ねることは、自己管理能力や問題解決能力といった非認知能力の発達を促します。
また、遊びや学習を通して、ルールを守ることや社会的なスキルを身につけることも、前頭前野の機能を高める上で重要です。
思春期(12〜18歳):高度な思考と自律性の発達
思春期には、前頭前野がさらに発達し、より高度な思考や判断、そして感情のコントロールができるようになります。
この時期に、自分の将来について考えたり、社会的な課題に関心を持ったりする経験は、自立心や責任感といった非認知能力を育みます。
また、周囲の人々との活発なコミュニケーションを通して、共感性や倫理観も深まります。
幼児教育における脳の発達への意識
幼児教育においては、この脳の発達の段階を踏まえ、遊びを中心とした様々な活動を通して、子どもたちの非認知能力を育むことが重要視されています。
例えば、
- ごっこ遊び: 社会性やコミュニケーション能力、想像力を養い、前頭前野の社会的な機能を刺激します。
- 積み木やパズル: 空間認識能力や問題解決能力を養い、論理的な思考を促します。
- 音楽や動きを伴う遊び: 感情表現や自己制御能力を高め、情緒的な発達を促します。
- 絵本や物語の読み聞かせ: 共感力や想像力を養い、言語理解を通して思考力を発達させます。
このように、幼児期の様々な経験が、脳の発達を促し、将来にわたって重要な非認知能力の土台を築くのです。
早期からの意識的な働きかけが、子どもたちの可能性を大きく広げることに繋がります。
非認知能力と教育 – 幼児教育の現場から

近年、幼児教育の現場では、知識や技能の習得だけでなく、非認知能力を育むことの重要性がますます認識されています。
子どもたちが未来社会で活躍し、豊かな人生を送るためには、自ら学び、他者と協調し、困難を乗り越える力が必要不可欠だからです。
幼児教育における非認知能力の位置づけ
従来の幼児教育では、読み書きや計算といった認知能力の発達が重視される傾向にありました。
しかし、近年の研究により、幼児期に育まれた非認知能力が、その後の学習意欲や学業的な達成、さらには社会に出てからの適応力や幸福感に大きく影響することが明らかになってきました。
そのため、現代の幼児教育においては、遊びを中心とした様々な活動を通して、子どもたちの主体性、探求心、社会的なスキル、感情の調整など、幅広い非認知能力を総合的に育むことが重視されています。
教育現場での具体的な取り組み
幼児教育の現場では、非認知能力を育むために様々な工夫が凝らされています。
遊びを通した学び:
子どもたちが主体的に遊び込む中で、自発的な発想力や問題解決能力、コミュニケーション能力などが自然と育まれます。
教師は、子どもたちの遊びを注意深く観察し、必要に応じて促すやサポートを行います。
体験的な活動:
自然観察、集団での製作活動、体を動かす遊びなど、実際的な体験を通して、子どもたちは好奇心や探求心を深め、自律的な学習の土台を築きます。
社会性を育む活動:
グループでの遊び、役割遊び、当番活動などを通して、協力することの大切さ、相手の気持ちを理解すること、ルールを守ることなど、社会的なスキルを意識させます。
感情を意識する活動:
絵本の読み聞かせや感情的な表現を取り入れた遊びを通して、自分の感情や他者の感情に気づき、適切に表現したり、対処したりする力を育みます。
自己肯定感を育む働きかけ:
子どもたちの良いところを見つけて褒める、努力を認める、失敗を受け止めるなど、日々の関わりを通して、子どもたちが自分自身を肯定的に捉えられるように働きかけます。
家庭との連携
幼児教育の効果を高めるためには、家庭との連携が不可欠です。
家庭での非認知能力の育みと、教育現場での取り組みが連携することで、子どもたちはより多方面に成長することができます。
幼稚園や保育園では、保護者向けの教育的なイベントや相談会などを通して、家庭での非認知能力の育み方について情報提供を行ったり、連携を深めたりする取り組みが進んでいます。
非認知能力は、子どもたちが未来を生き抜くための大切な力です。
幼児教育の現場と家庭が協力し、子どもたちの可能性を最大限に引き出すための効果的な育成を目指していくことが、これからの社会にとってますます重要となるでしょう。
まとめ – 幼児教育で育む非認知能力が、未来を拓く
この記事では、「非認知能力とは何か」という基本的な疑問から始まり、幼児教育においてなぜそれが重要視されているのか、そして家庭や教育現場でどのように育んでいけば良いのかについて、具体的な方法や事例を交えながら解説してきました。
幼児期は、非認知能力の土台を築く上で、かけがえのない時期です。
この時期に育まれた自己肯定感、意欲、忍耐力、コミュニケーション能力、創造性といった内なる力は、その後の学習、社会的な適応、そして人生全体の幸福感を大きく左右します。
AI技術の進化やグローバル化が進む現代社会において、知識やスキルだけでは予測できない未来を生き抜くためには、自ら考え、行動し、他者と協力する力、すなわち非認知能力が不可欠です。
幼児教育は、子どもたちが未来社会で自分らしく輝くための、最初のそして最も重要な投資と言えるでしょう。
家庭でできること、教育現場で取り組むこと、そして地域社会との連携。
それぞれの場所で、子どもたちの非認知能力を育むための意識的な働きかけが求められます。
ぜひ、この記事でご紹介したヒントや、関連シリーズ記事を参考に、お子様の成長に合わせて、非認知能力を育む日々の関わりを実践してみてください。
小さな積み重ねが、お子様の未来を大きく拓く力となるはずです。
併せて読みたい
→ 3歳児や4歳児の幼児教育の全体像や、親が知るべき発達特性については、こちらの記事【 3歳児の幼児教育ロードマップ 】【 4歳児の発達をグーンと伸ばす!親が知っておきたい幼児教育のコツ 】で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
おすすめ記事 (テーマ別に見る非認知能力の育み)
- 遊びが育む力:
幼児期における遊びの重要性と、遊びを通してどのように様々な非認知能力が育まれていくのかを解説します。
家庭で簡単にできる遊びのアイデアも満載です。
【「遊びで伸ばす非認知能力|3歳からの簡単アクティビティ5選」】 - やる気を引き出すには?:
子どもの内発的な動機づけを高め、学習意欲や挑戦心を育むための具体的な方法をご紹介します。
【「やる気を引き出す「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の効果的な組み合わせ方」】 - 運動で伸ばす非認知能力:
体を動かすことの楽しさと、運動を通してどのように意欲、集中力、自己制御などの非認知能力が育まれるのかをご紹介します。
【「運動×非認知能力:子どものやる気を引き出す運動習慣の作り方」】 - 音楽の力:
音楽体験が子どもの情緒的な発達、協調性、集中力に与える影響について解説し、家庭でできる音楽教育のヒントをお届けします。
【「家庭でできる音楽教育と非認知能力の育成」】 - アートの可能性:
絵画や工作などのアート活動を通して、子どもの創造性、表現力、感性をどのように育むことができるのかを探ります。
親子で楽しめるアート体験のアイデアもご紹介。
【「アート体験&鑑賞で子どもの才能開花!親子で育む非認知能力」】 - 自然との触れ合い:
自然体験が子どもの探求心、観察力、主体性を育む上で、いかに貴重な機会となるかを解説します。
親子で楽しめるアウトドア学習のアイデアもご紹介。
【「自然体験で非認知能力を伸ばす!親子で楽しめるアウトドア学習」】
これらのシリーズ記事を読むことで、非認知能力についての理解をさらに深め、お子様の年齢や興味関心に合わせて、より効果的な育み方を実践していただけるはずです。
ぜひ、気になる記事から読み進めてみてください。