
「安全な環境で育てたい」
「健康に過ごしてほしい」
それはすべての親が願う、子育ての基本ともいえる想いです。
でも実際には、どこまで配慮すれば“安心”と言えるのか、自信が持てないこともありますよね。
そんなときにヒントになるのが、保育の質を評価する国際基準『ECERS』の視点です。
ECERSでは、子どもの“安全と健康”について、
- ✅ 物理的な環境の安全性
- ✅ 衛生管理の徹底
- ✅ 精神的な安心感
…といった複数の側面から保育環境を評価しています。
この記事では、ECERSの考え方をヒントに、
保育園選びで「安全・健康の整った環境」をどう見極めるか、
そして、家庭でもできる実践的な工夫についても紹介します。
“安心のその先”にある、子どもの育ちを一緒に見つめていきましょう。
🧭 ECERS実践編シリーズ|親が学ぶ保育の質
◀️前のステップ:
ECERSで見る「保育者の関わり方」の質とは?| 子どもの心に寄り添う保育を親も学ぶ視点から
└ 子どもの心の育ちに直結する「関わり」の質を解説
▶️次のステップ:
ECERSが示す「遊び」の重要性|子どもの成長を促す多様な遊び環境とは?
└ 「遊び」の重要性と家庭での遊び環境のつくり方を解説
1. ECERSが重視する「安全と健康」とは?

ECERSにおける「安全と健康」は、単に“ケガをしない”“風邪をひかない”というレベルにとどまりません。
むしろ、子どもが主体的に活動しながらも、リスクが適切に管理されている状態を評価します。
◆ 安全=“行動の自由”と“守られている実感”の両立
- ✅家具の角にカバーがある、床に滑り止めがあるなど、物理的な安全性
- ✅子どもが自由に動ける動線が確保されているか
- ✅危険なものが手の届かない場所にしっかり収納されているか
子どもが思いきり遊び、探索できる環境を守るには、「見守る目」と「仕掛け」の両方が必要だという考え方です。
◆ 健康=衛生管理+生活習慣のサポート
ECERSでは、以下のような衛生・健康面の配慮が求められます:
- ✅食事前・トイレ後の手洗い指導と習慣化
- ✅おもちゃの定期的な消毒
- ✅咳・鼻水などの症状に応じた対応や保育者の健康観察
- ✅調理スペースと保育スペースの分離、安全な給食提供
つまり、目に見える清潔さだけでなく、日々のルーティンの中に“健康を支える仕組み”があるかどうかが問われるのです。
2. 保育園見学で注目したいチェックポイント

「安全と健康」は、保育園見学時にもじっくり確認したいポイント。
ECERSの視点をもとに、以下のようなチェック項目を意識してみてください。
◆ 園内の物理的安全性はどうか?
- ✅階段にゲートが設置されているか
- ✅家具の角に保護材がついているか
- ✅転倒しやすい床材は使われていないか
- ✅誤飲しやすい小さな物が放置されていないか
◆ 衛生面の配慮が行き届いているか?
- ✅手洗い場が子どもの目線で使いやすく整えられているか
- ✅トイレが清潔で、プライバシーにも配慮されているか
- ✅おむつ交換後や食事前の手洗い指導がされているか
- ✅おもちゃや遊具が定期的に清掃されているか
◆ 精神的な“安心感”を生む環境か?
- ✅園全体が明るく、落ち着いた雰囲気か
- ✅子どもが安心して1人になれるスペースがあるか(コージーコーナーなど)
- ✅保育者の声かけが温かく、子ども一人ひとりの状態を気にかけているか
- ✅事故や病気が起きた際の対応マニュアルが整っているか
保育園の清潔さや安全性は、「大人の目線での清潔」ではなく、子どもの目線で安全かどうかが重要。
その視点を持つだけでも、見学時の気づきがぐっと深まります。
3. 家庭でもできる“安全と健康”の整え方

保育園だけでなく、家庭でもできる安全・健康の工夫を知っておくことは、子どもの安心な成長にとって大きな支えになります。
ECERSの視点をヒントに、今日からできる実践例をご紹介します。
🏠 【安全面】家の中に「見えない危険」が潜んでいないか?
○ 家具の配置を子ども目線で見直す
- ✅テーブルや棚の角にクッション材をつける
- ✅テレビや本棚など、転倒の危険があるものは固定する
- ✅引き出しにチャイルドロックをつけることで、誤飲リスクも軽減
○ “子どもが自由に動ける”空間の確保
- ✅おもちゃの収納を子どもが自分で出し入れできる高さにする
- ✅プレイマットなどを活用し、安心して動き回れるスペースを用意
🧼 【衛生面】“清潔習慣”は家庭でこそ育てられる
○ 手洗いの習慣を「楽しく」身につける工夫を
- ✅子どもが届きやすいように踏み台を置く
- ✅自分専用のかわいいハンドタオルや石けんを用意する
- ✅一緒に歌をうたいながら手洗いすると、時間の感覚も育てられます
○ おもちゃや絵本の衛生管理も意識的に
- ✅布製のおもちゃは洗濯、プラスチック製は除菌スプレーで定期的に消毒
- ✅絵本は時々拭き掃除をして、ホコリや汚れの蓄積を防止
💡 親の関わり方で「安心感」が変わる
安全・健康の整備は、物理的な対策だけではありません。
親の言葉かけや見守り方も、子どもにとっての“安心”に大きく影響します。
- ✅転びそうなときも「見守る勇気」を持つ
- ✅小さなケガのときには「大丈夫だったね」と子どもの回復力に目を向ける
- ✅食事中の衛生や咳のマナーなどを、“一緒に考える”スタンスで伝える
こうした関わり方が、ECERSでいう「子どもの主体性と安全の両立」につながります。
4. 安全・健康の先にある「育ち」を見つめて
安全で衛生的な環境は、子どもが安心して自分を発揮できる土台になります。
ECERSが評価しているのは、ただの“対策”ではなく、その先にある「子どもの育ちを支える仕組み」です。
保育園でも家庭でも、
- ✅危険を取り除くのではなく「リスクを理解してコントロールする」
- ✅子どもが自分で気づき、行動できるよう「習慣を育てる」
- ✅「守る」だけでなく「信じて任せる」視点を持つ
そんな環境づくりが、子どもの自己肯定感や生きる力をはぐくむ一歩になります。
まとめ|“安全と健康”は、子どもの「やってみたい!」を育む土台
ECERSが教えてくれるのは、安全と健康が、子どもが心から「やってみたい!」と思える挑戦の土台であるということ。
それは、危ないからダメと止める「守り」ではなく、子どもの好奇心を「大丈夫だよ」と後押しする「攻め」の視点です。
保育園ではこの「攻めの安全」の視点で、物理的な安全や衛生管理はもちろん、お子さんが安心して挑戦できる雰囲気があるか、保育者の見守りはどうかを見極めましょう。
ご家庭では、子ども目線で危険箇所を見直し、衛生習慣を楽しく身につける工夫を。
そして何より、「大丈夫だよ」「やってごらん」という信頼のまなざしで、お子さんの挑戦を見守りましょう。
あなたが「子どもの行動を支える環境」に目を向けるその視点が、お子さんの自己肯定感を育み、未来への可能性を大きく広げるはずです。
お子さんの輝く笑顔のために、ぜひ今日から、この新しい安全の視点を取り入れてみてください。