
「良い保育園」って何を基準に選べばいい?
「先生の雰囲気が良さそう」「施設がきれいだった」
そんな“なんとなく”で保育園を選んでいませんか?
保育園選びは、子どもが長時間過ごす大切な場所を選ぶこと。
だからこそ、「どんな基準で見るか?」はとても重要です。
そこで注目されているのが、ECERS(エカーズ)という国際的な保育評価ツール。
日本の「保育所保育指針」とはまた違う視点から、“保育の質”を見える化してくれます。
この記事では、保育所保育指針とECERSの違いをわかりやすく解説し、親としてどんな視点を持つとよいかを整理していきます。
🧭 ECERSシリーズ|この記事はSTEP3:比較編です
◀前のステップ:
保育園見学で「ここを見て!」親が注目した3つの視点|ECERS基準でチェックしてみた
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ECERSで評価される“子ども中心の保育環境”に役立つアイテム5選|家庭でも活用できる!
ECERSと保育所保育指針、何が違うの?

そもそも「保育所保育指針」とは?
「保育所保育指針」は、厚生労働省が策定した保育の基本ルールです。
保育園における保育の目的・内容・方法・配慮点などがまとめられていて、日本全国の保育園が最低限守るべき基準とされています。
これは法律に基づいた公的なガイドラインで、保育士養成や園の運営にも深く関わっている“制度的な柱”です。
一方、「ECERS」とは?
ECERS(Early Childhood Environment Rating Scale)は、アメリカで開発された保育環境評価スケールです。
主に欧米を中心に世界中で活用されており、次のような特徴があります。
- ✅ 子どもの主体性・遊び・人的環境・保育士の関わり方などを評価
- ✅ スコア化できる客観的な評価ツール
- ✅ 教育研究にもとづいた実践的な改善指標
- ✅ 保育現場の「質の向上」を目的とする
つまり、「守るべきルール」ではなく、「より良い保育環境をつくるためのツール」がECERSなのです。
保育所保育指針=制度、ECERS=現場の質を評価する視点
表にして、わかりやすく比較します。
比較項目 | 保育所保育指針 | ECERS(エーカーズ) |
---|---|---|
成り立ち | 厚生労働省が策定 | 米国で開発された研究ベースの評価スケール |
目的 | 保育の基準を定めること(制度的) | 保育の質を評価・改善すること(実践的) |
対象 | 全国の保育所(制度全体) | 園単位/クラス単位の環境と関わり |
評価内容 | 指導計画・保育内容・配慮点など | 子どもの視点・遊び・空間・人との関係 |
保護者との関係性 | 間接的 | 園の質の“見える化”を通じて対話が生まれる |
保育の「基準」と「質」はどう違う?親としてどう見る?

「守る」だけでは足りない?保育の“質”に注目
日本の保育所保育指針は、「全ての子どもに安心・安全な保育を提供するための最低限の基準」を示すものです。
つまり、これは“スタートライン”。
一方で、子どもの育ちに本当に影響を与えるのは、保育の「質」です。
たとえば、同じ指針を守っている園でも、
- ✅子どもが自由に選べる遊びの幅が違う
- ✅保育士が子どもの言葉にどう関わるかが違う
- ✅静かに落ち着ける場所があるかないか…など、
“体験の中身”には大きな差があることも。
そこで、ECERSのような評価スケールが活躍します。
ECERSが見ている“子どもの日常”とは?
ECERSでは、「子どもの目線」に立って日常の環境を評価します。
具体的には次のような視点があります。
🔍 例:ECERSで見られるポイント(一部)
- ✅自由遊びの時間が十分にあるか?
- ✅興味・関心に合わせた教材や道具があるか?
- ✅異年齢児との交流が促進されているか?
- ✅室内外の安全性と快適性はどうか?
- ✅保育士が一人ひとりの子どもに温かく応答しているか?
これらは、保育所保育指針では“文章として抽象的に書かれている”ことも多く、実際の保育現場でどう行われているかを、保護者が判断しづらい部分でもあります。
親が注目すべき「見えにくい保育の質」
たとえば保育園の見学に行ったとき、「きれいな園舎」や「にこやかな先生」は一目でわかります。
でも、それだけで判断してしまってはもったいないのです。
ECERSを参考にして見るべきなのは、こんなポイント:
- 👀 園児たちは自分のペースで過ごせているか?
- 👀 子ども同士の関わりが自然に生まれているか?
- 👀 絵本やブロック、おままごとなどのコーナーが充実しているか?
- 👀 保育士は子どもに話しかける時、目線を合わせているか?
こうした視点は、ECERSを知っていると「意識して観察できる」ようになります。
ECERS導入の保育園にはどんなメリットがある?

園全体に“共通言語”が生まれる
ECERSを導入する最大のメリットのひとつは、保育の質に対する共通認識が持てることです。
たとえば、ある保育士が「子どもの主体性を大事にしたい」と思っていても、それをどう実現するかは人によって違うこともあります。
そこで、ECERSのような評価基準を導入することで、
- ✅どんな保育環境が“子どもの主体性”を育てるのか
- ✅どんな関わり方が“良質なやりとり”なのか
といった視点を、保育士間で共有しやすくなるのです。
改善サイクルが回る!スキルアップにもつながる
ECERSは、「今ある保育環境の状態」を数値やチェックリストで“見える化”する仕組みです。
そのため、「どこを改善すれば、よりよい保育になるか」がはっきりし、保育士自身が課題を発見しやすくなります。
さらに、改善後の状態を再評価することで、成長の実感にもつながりやすく、スタッフのモチベーションアップにも◎。
📌 実際にECERSを導入している保育園では、「保育の話し合いが前向きになった」「研修が実践に結びついた」という声もあるようです。
保護者との信頼関係にもプラス
園内でECERSの視点が根づくと、保護者への説明もより具体的になります。
たとえば、
「この棚には子どもが自由に選べる遊び道具を置いています。ECERSの観点でも、子どもの主体性を育む大切なポイントです」
と伝えられれば、親としても安心感が増しますよね。
保育の質を「見える言葉」にすることができるのは、保護者との信頼関係を築くうえでも大きな武器になります。
今後の展望と親ができること
日本でもECERSの活用が広がる兆し
現在、日本でECERSを本格導入している園はまだ少数派ですが、保育の「質」を見える化するニーズの高まりとともに、少しずつ広がりを見せています。
これはつまり、保育の“質”を全国的に底上げしようという流れが本格化しているということ。
「良い保育とは何か?」を改めて問い直す、ポジティブな変化と言えるでしょう。
保護者としてできる、園選びの新しい視点
とはいえ、まだ多くの園ではECERSを導入していないのが現状。
では、保護者はどうすればよいのでしょうか?
実は、ECERS的な視点を親が持つだけでも、園選びに大きな違いが出ます。
たとえば見学の際にこんな点を意識してみましょう:
- ✅ 子どもが自分で遊びを選べる環境があるか?
- ✅ 絵本やおもちゃが年齢に合った形で自由に使えるようになっているか?
- ✅ 落ち着いて過ごせる「安心スペース」があるか?
- ✅ 保育士が子どもの話を丁寧に聞いてくれているか?
これらはすべて、ECERSのチェック項目に通じるものばかりです。
📌 “ECERSに学ぶチェック視点”を持つことは、保育園の本質を見る力を育てるヒントになります。
子どもにとって本当に大切な環境を選ぶために
保育所保育指針は、国としての最低基準。
ECERSは、それを超えて「より良い保育」を目指すツール。
どちらが正しいというより、両方の視点があってこそ見える“本当の保育の質”があります。
だからこそ、親としては「何となく良さそう」だけでなく、「どんな環境で、どんな風に子どもが過ごすのか」を見極める目を持つことが大切です。
最後に:あなたの視点が、子どもの未来を変えるかもしれない
保育園選びは、子どもの毎日に直結する大切な選択。
でも、何を基準にすればいいかわからない…という方こそ、「ECERS」という新しい視点を知ることで、見えてくるものがきっとあるはずです。
子どもの笑顔があふれる園には、“子どもが心地よくいられる工夫”があります。
その背景にあるのが、ECERSのような“見えない努力”なのかもしれません。
まとめ|“見えない質”を見抜く目を育てよう
「保育所保育指針」と「ECERS」は、それぞれ異なる役割を持つ保育の指標。
- 保育所保育指針は、日本の保育制度を支える「基本ルール」
- ECERSは、子ども視点の「質の高さ」を評価するツール
どちらか一方ではなく、両方を知ることで“本当に良い保育”が見えてきます。
✅ 見学時に保育の「環境」や「関わり」に注目する
✅ 子どもの主体性や安心感を大切にしているかを観察する
✅ ECERS的な視点を持って園選びに臨む
こうした意識が、親としてできる「最初の一歩」です。
保育園選びは、子どもの未来をつくる大事な選択。
だからこそ、「なんとなく」ではなく、確かな視点を持って選びたいものですね。
ECERSという新しい物差しを通して、「あなたの子どもにとって本当に心地よい場所」を見つける手助けになりますように。
📚 あわせて読みたい👇
📘 ECERSシリーズ|学びのステップで読む
🔰 STEP 1|ECERSとは?【基礎編】
▶ ECERSとは?保育の質を測る国際評価ツールを親目線でわかりやすく解説
└ ECERSってなに?保育の質ってどういうこと?まずはここからやさしく解説。
👀 STEP 2|保育園見学で“ここを見て!”【実践編】
▶ 保育園見学で「ここを見て!」親が注目した3つの視点|ECERS基準でチェックしてみた
└ 実際に見学する時、どこをチェックしたらいいの?親目線で具体的に紹介。
⚖️ STEP 3|保育所保育指針との違いとは?【比較編】(← 今ココ)
▶ ECERSと保育所保育指針の違いとは?保育の質を見極める新しい視点
└ 日本の基準とどこが違うの?「質の見極め方」を深めたい方へ。
🧸 STEP 4|家庭での環境づくりにも!【応用・実践編】
▶ ECERSで評価される“子ども中心の保育環境”に役立つアイテム5選|家庭でも活用できる!
└ 子どもにとって心地よい環境って?家庭でもすぐに使えるアイテムを紹介!